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ひっさしぶりに読み切り書いたぜ~(この時期に)

長くなるんで続きを見てください。
それじゃ始め。


 捜し求めていた味にたどり着くにはあまりにも中途半端な期間である。
 ここは調理場、客に食べ物を提供している。ただの客の相手をしているわけではない。相手は思春期に突入中で自己主張の多い高校生たちだ。


 ここの高校の生徒は口が悪い。食堂のお金が高いとか盛る量が少なすぎる。メニューのバリエーションが少ないなど褒められる意見など全くなかった。
 ただでさえ赤字だというのにこれ以上利益を追求したら今度という今度は倒産する。つまりフロントの解雇だ。
 自転車操業に近い形で運営してきたわけだが生徒会からとある要望が来た。
「デザートを作れば客が増えるんじゃないか?むしろ作れ!FUCK☆YOU!」
この言葉はアニメベイブレードの主人公の名前を思わせ、中央線の終着駅名までも想像させる(礼儀を知らない)生徒会長によるものだった。
全生徒の主張が生徒会の口によって発せられているならばデザートを作るのも一つの手かもしれない。そして生徒の納得するデザートを今週中に生徒会に提出することになっていたのだ。
 食堂の職員たちがデザートメニューを考えている中、私は一つのデザートが目に浮かんだ。
「(甘くて、プルップルで、バケツ大に作ってしまえば剣道の竹刀でさえも跳ね返してしまうもの……)」
「プリンだ……」
真っ先にアイデアが浮かんだ私は早速作業に取りかかった。周りの職員たちはそれぞれで考えてくるように指示しておいた。これで自分の作品に集中できる。
 生徒会による試食会を一週間前に控えた午後の調理場で私は一人卵を割っては溶き、牛乳をふんだんに使っては色づけし、黄金色に輝くその液体をカップに丁寧に乗せては冷蔵庫に入れ、完成を心待ちにしていた。
 しかし、材料を使いすぎたのかチーフのおばさんに怒られてしまった。何とも横っ腹を円柱上に象られた金属の棒に突かれたような衝撃だった。
 一晩経ってから冷蔵庫を開けてみると私は悶絶した。プリンが固まっていないのである。指でカップの表面を触ってみるとぴちゃぴちゃと音を立てそれっきり私の心を満たす感触は何一つ無かった。卵と牛乳を混ぜるだけで冷やせば固まるのではなかったのか……?
「あんた馬鹿ねぇ……」
後ろから声がする。昨日私をさんざんしかった西島(仮称)が立っていた。
「砂糖を混ぜなくてどうやってプリンが完成するの?材料の無駄遣いじゃない」
「違う。私は厳選された天然素材のうま味、そして甘みを存分に引き出すために」
「そんなに引き出したいんなら蒸せばいいじゃない。冷たくしたら固まると思っちゃいけないよ」
「なん……だと……」
私は重大な過ちを犯していたようだ。颯爽と蒸し器を取り出して冷蔵庫に冷やしてあったそのカップ全てを蒸し器に入れようとしたそのときに
「はい、今日の昼食を作りましょう!」
掛け声をあげたのはいい年こいたおばさんの南島(仮称)さんだった。今日の献立はシュウマイがあった。これじゃ当分蒸し器も使えそうにない。仕方がないからカップを全て冷蔵庫に戻しておいた。
 遂に試食会二日前になってしまった。蒸し器を使用しようとしたにも関わらず横浜の五連勝の後、期待を持て余しつつ四連敗(現在)という偉業を現在進行形で成し遂げてしまっているのだ。テレビに付きっきりだった私は五日間もデザートづくりに手を付けず、冷蔵庫に寝かせておいたカップたちは無惨にも東島さん(仮称)たちに小麦粉を加えられてしまってロールケーキと化してしまった。これでは生地の素を作るのを手伝っただけじゃないか!危機感を感じた私は剣道場の隣にある図書館で料理の本を探し、プリンのメニューを確認し、生地を作り、カップに注ぎ、蒸す直前の段階まで達していた。
「いよいよだな……」
私はカップを一つ蒸し器に入れて、コンロのスイッチを押した。「ボーr」と燃え上がる炎は私のプリンに対する情熱をそのまま形にしたかのように思えた。黄色く光るその炎は確実に蒸し器の水温を上げ十分も立てば湯気が立ち上っていた。
「もう五時か……」
ストップウォッチで時間を計り初めて十五分が経過した。そろそろプリンが蒸しあがるだろう。蒸し器のふたを開けると濃い湯気が私の顔に立ちこめた。浦島太郎もこんな気持ちだったのであろうか。雲のような視界を抜けるとカップが一つちょこんと蒸し器の中に座っていた。
 興奮してすぐにカップに手を付け火傷をしてしまうほどのドジではないのでカップが十分に冷めてから手に取り、スプーンを用意して、一口味わってみた。
「こ……これは……」


市販のプリンとは全く違ったなめらかさ。それは厳選素材を十分に生かした触感であって決して化学調味料で表現できるわけがない。口に運ぶと同時に舌いっぱいに甘さが広がり自然とのどに吸い込まれていく。砂糖を最低限度に使用したのか日本人でしか楽しむことのできないほのかな甘みの大人の味わい。もう食堂だけの商品はなくて北海道の農家に商品化してもらおうか……。


と生徒全員に思わせるには並々ならぬ努力と失敗や絶望の繰り返し、そしてあきらめない心が必要であることが強く強く思い知らされるほどの味だった。目の前にいばらの道が思い浮かぶ。よく見れば冷蔵庫の陰に南島さん、東島さん、西島が(一人足りない気がするが……気のせいか。)私を見つめていた。表情をみて味を感じ取ったのか私に見えないように悲しんでいるように見える。慰めもなにも今の私にはなにもいらなかった。



 今この調理場でカップを踏みしめてもう一度言う。捜し求めていた味にたどり着くにはあまりにも中途半端な期間である。


前編終わり。次回に続く。


食堂モデル S南高等学校定時制の食堂
友情出演  リアル生徒会長(諸事情により名前は晒せません)
SPECIAL THANKS 我が友達
SPECIAL SA-SEN 我が友達(一部含む)

この物語は作者の妄想によって作られています。決して生徒会長の立場を汚すものでなく生徒会長本人の存在自体がネタであることも断じて思っておりません。
尚、私の高校にデザートが発売されるのは事実です。同級生の皆様は楽しみに待っていてください。


今日食堂に行ったらデザートがまだ発売されてなかったんだぜ。発売を見越して書いた小説なのに。悲しいね。
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